何故に。
 
 呆然と地べたに座り込みながら、 はひとつ、ゆっくりと瞬きをした。
 何故に。
 疑問はぐるぐると脳内を巡り、クエスチョンマークばかりを撒き散らす。
 一面に見えるのは痩せ土の荒野。目に優しい緑色は望むモノに色付かず、黙したまま動かない、更にキッパリと見たことがない、目の前で直立する物体を綺麗 に染め上げていた。
 「・・・エネルギー源はやっぱ、太陽光線ですか?」
 「誰が光合成などするか」
 とりあえず。
 この無愛想な緑色の宇宙人には言葉が通用するようだった。






 I feel dizzy






 1

 良く考えてみようと思う。
 私はさっきまで、そう、この触覚を生やした宇宙人に声をかけてみる3分程前まで、確かにゲームセンターの入り口にいた。
 学校帰り。偶然出会った友人の持っていた私服をパチり、意気揚々とゲームセンターに向かい、格闘ゲームにて20人を程よくボコッたら、あまりの操作ス ティックの酷使によって折れてしまい、やべえなあ何て思ったからコッソリ逃げようと駆け出して、入り口で店員に捕まりそうになって。
 それで。
 
 『捕まってたまるか!』
 振りほどいた。瞬間。
 『容易い願いだ』
 声が聞こえて。
 視界が真っ白になって。
 ・・・それで。
 
 「・・・・・・・・・それで?」
 気が付いたら、緑色の植物なんて影も形もない荒野に出現していました。
 ・・・この、白いマントをタキ○ード仮面の如く風に遊ばせている、宇宙人の目の前に。
 「ええと・・・・・・・・・あのう」
 「何だ」
 このいやに目つきの悪い宇宙人は、私が現れてから既に5分は経つのに事情の説明すら求めて来ない。ただじっと、高い視点から睨んで(そうとしか見えな い)きやがるだけだ。が、話しかければ一応反応してくれるらしい。
 あくまで無愛想だが。
 
 「ここはどこでしょう?」
 「知らん」
 
 ・・・・・・・・・・・・・・。
 本当に・・・反応するだけかコイツ。
 あからさまに使えねえな、という目で見られたことに気付いた腕の微妙な範囲がピンク色な宇宙人の頬が、ピクリと引き攣った。チッ、とひとつ舌を打って、 再びその重い(態度から言って)口を渋々と開く。
 「この場所に地名が付いていないだけだ。東に行けば都に着く」
 「・・・都。ぜんっぜん見えないんですけど」
 「歩けば5日はかかるな」
 冗談はよして下さい。

 ギョッとしてしかめっ面を振り仰げば、その顔は真面目以外の何者でもない。
 じゃあなんでアンタはこんなトコにいるんだとかじゃあなんで私は以下同文とか思ったが、そんな状態でもないのだということは・・・とりあえず理解した。
 「・・・もっと近くに人間は」
 「おらん」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 マジで。

 どうしたらいいのかな?
 切実にパニックを起こそうとする頭を必死に抱え、私はこの、まぶたが異常に重たげな宇宙人に対し長いセリフを吐き出させる効果的な質問を、力の限り考え ることにした。






 2

 異世界なんてある筈ないし。
 そう思っていた。


 驚愕も冷めぬ内に。
 分かる範囲での事情説明を終えた私に、ひとつの単語が舞い降りた。
 
 「・・・シェンロン?」
 「恐らくお前の願いを聞き届けたのだろう」

 神龍。
 意外にスッキリとした肢体の宇宙人さん───って迂闊にも呼んだらしこたま怒られた───もとい、ピッコロと名乗った宇宙人が指で空をなぞるのを、私は 訝しげに見遣っていた。何の作用かなぞった跡は青っぽい光を湛え、神龍、という文字を筆跡明らかに浮かび上がらせている。

 神龍。漢字である。その上中国読みである。関係ないが達筆でもある。
 (宇宙人が漢字を・・・)
 しかも明らかにここ日本じゃないし中国でもないし。
 地球に宇宙人はいないはずだけれど。
 違和感に苛まれかけた精神を救ったのは、日本語話してるし好都合だからいいじゃん、というポジティブシンキングだ。ああ、良かったなあ私、明るい人間 で。

 「三つだけ願いを叶えてやる、というシロモノだ。偶々呼び出されていた所何らかの干渉を受け、お前の『願い』に反応し、ここに呼び寄せた・・・そんなオ チだな」
 「いや落とされても!つうか信じてくれるモンなんですねえ、こんな話」
 馬鹿かお前って流されるのも覚悟してたんですけど。
 呟く私にピッコロが眉(ないけど)(その辺)を寄せる。
 「奇怪事には慣れたんでな」
 「・・・そっスか」
 奇怪事呼ばわり。それはそれで悲しいものがあるが、信じて貰えないよりは数倍マシだろう。

 知らず重い溜息を吐いていた。信じる。ピッコロは大体の事情を何となく分かっているような言い様をしているが、私はそもそも何も知ってはしないのに。
 信じてくれる信じてくれないの問題ではない。自分のこの境遇こそ。
 「・・・信じらんない、ホントに、何なんだよ」
 何でこんな、世界ごと違ったような場所に。

 爪を噛み、未だ座ったままいきなりにグチを漏らす人間をどう思ったのだろう。ピッコロはぐるりと辺りを見回すと不機嫌そうに鼻を鳴らし、おもむろに私の 右腕を掴んだ。

 「───何?」
 「野犬だ、場所を変えるぞ」
 早口に言って───ああ、確かに岩陰から輝く双眸が何対もこちらを伺っている───彼は───彼かな?彼でいいよな多分。こんな女嫌だよな───私の明 らかな動揺を歯牙にも掛けず。

 「ぇぁッ!?」

 飛んだ。

 「ッぎゃあああぁぁぁぁぁ!?」
 その恐ろしいスピードと高度に自発する悲鳴。
 生身で飛んだという普通ならありえない行為はこの際どうでもいい。
 私の脳内を占めたのは、上昇による余分な重力を受けて増した全体重を支え千切れそうな腕の痛みと、コイツ後で絶対殴ってやる、という、あながち理不尽で もない衝動だった。






 3

 ───右腕が痛い。
 遥か眼下、前方から後方へと物凄い速度で流れ行く大地を目で追って、私は口中小さく呟いた。

 「そうか」
 本当に小さな、それこそ風の全く無い場所で1m離れていれば聞こえないような小さな呟きを、それでもピッコロの横に伸びた性能のよろしい耳は拾ったよう だった。このゴウゴウと唸る風音が酷く煩い、上空で。
 ───ありえねぇ・・・。
 愛想も心配もなく相槌を打つピッコロに、私の不機嫌が微妙に顔を出す。

 本当に、痛いのだ。風に煽られて身体が45度程傾いている、そんなただでさえ過酷な運ばれ環境に、更に腕だけ持って運輸、などという無茶。耐えられる人 間が如何かしている。5分。それだけしか経っていないのに、既に右の腕は自分の意思では指先を1mm動かすことも不可能になっている。

 けれど。

 ・・・今はこの宇宙人に頼るしか、生き延びる方法はない。文句はおろか、本来なら意見さえ許される立場ではないのだ。
 痛いけれど。
 死ぬわけじゃないし。

 「ピッコロさん、何処向かってるんです?」
 「都だ」
 ふと痛みが減った。心頭滅却すれば火もまた涼し───ではなく、一気に血液不足で麻痺が進んだ訳でもない。何をしたとかはよくわからないが、多分ピッコ ロが何かしらの方法で緩和できるような事をしてくれたのだろう。
 ありがとう、とひとつ口にして。

 「・・・なんで?」
 「お前の身の振り方を決める。来たのと同じ方法で帰るには一年待たなければならんからな。それ以外の方法は、今はわからん」
 「一年?」
 「神龍を呼び出すドラゴンボールという球は、一度使うと一年間は単なる石となる」
 ふうん、と生返事。馬鹿みたいに疑問を繰り返す私に懇切丁寧(彼の態度から言えばきっと、懇切丁寧、だろう)に回答をくれるピッコロには悪いが、正直よ くわからない。それは私の世界では考えられなさ過ぎて、ビジョンが繋がらないのだ。想像もつかない。
 微妙な態度のままで会話を終わらせるのも勿体無かったので、何気なく言葉を発する。聞かせるつもりのような、そうでないような。

 「・・・顔のわりに、優しいよね」
 腕を掴む手が、瞬間力を増した気がした。

 目が合う。

 「・・・何だか急に手から力が抜けていくな」
 ずるり、と。掴まれる箇所が手首まで落ちた。

 言葉通り緩めやがったのだ、この宇宙人!

 「わーあーッ、なんで、褒めたのに!気に食わないなら言い直します!
  『ピッコロさん、眉毛無くてすっごく目つき悪い上緑色だけど、ぶっちょヅラのままなわりにとおってもお優しいですよね』うわおーう」
 「おっと」
 風の方向が一気に変わる。横、から縦、へ。傾いていた身体は更に角度を変えて、髪は上へ上へとなびく。正確には斜め上後方に。

 「ギャーッ!?」

 何処の世界でもやはり、上空で特別何もしていなければ落下するらしい。横加速からいきなり手を放された身体は、カワセミが獲物を狙って下降するような角 度で飛んでいた───飛ばされていた。

 ガッ。
 「ゴフッ」
 斜め下後方からえぐるように腹が圧迫されて、息が詰まるだけで済んだのは日頃の行いが良いせいだ。・・・俵を担ぐように肩に抱えられ、後ろ向きに進行す る恐怖を『良』とするならば。
 ピッコロの、一応はオチャメからの救出であった筈の行動も、何故こんなに自分は丈夫なのか(それこそ心身共に)という疑問を抱かせるに過ぎない行為と なった。

 「生きているか?」
 「い、命の尊さというものを大事にする保護精神は必要ですようッ」
 「お前が礼儀を考え直したら思い出してやっても良い」
 「うっ・・・うっ・・・お母さ〜ん・・・貴女の教育方針は間違ってらっしゃったようで、ワタクシめは命の危険を痛感する次第でございます・・・」
 減らず口とは、減らないからこそのものである。呆れた顔を見せるピッコロだが、こいつもなかなか食わせものだと思う。この勘はきっと外れていない。

 「腹、痛いんですけど」
 「一言素直に謝れば、それなりに痛くない運び方をしてやろう」
 黙。
 一瞬の葛藤。ここまで来て謝るのはポリシーに反するのだけれど。

 「・・・背中に乗せて、スーパーマンみたく運んでくれるなら」
 「死ね」

 バンジージャンプは落下感だけで恐怖がないからこそ楽しいのだなあと思い知ったある異世界の午後(多分)。
 そういえばコイツ、結構喋ってるなあと思ったのは何度目の落下だっただろう。




 やっちまいましたなDBモノ。そしてついに!いえーい名前変換小説ー(ドリー夢と言い切る自信はない)(名前呼ばれてないし)
 ハイル ピッコラー!同士求ム



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