覚えのある感覚。ああ、来たな、と苦笑する。発光する視界、目の前にはやはりサーモグラフィの世界が広がった。心配そうな、悲しそうな、そんな顔をして いるだろう大切な人たちの顔がわからなくなるのが堪らなく寂しい。伸ばした手に掠る感触が急激に離れて行く。揺れる。揺れる。名前を呼んで(呼ばれて)、 ありがとう、今まで私はこっちで幸せだったと告げて(告げたつもりで)、嫌になったらいつでも戻っておいでと聞こえた(気がした)声を聞いて、なんだ、あ の人たちは私の想いなんて全部わかっていたんだ。ありがとう、忘れない。告げたのか告げられたのか、思考が危うくなった今の私には理解できない。ああ、そ うだ、忘れないと確かに言っていた、忘れたくないと言っていた。言ってくれた。じゃあ、願いはひとつでよかったのか。まあ最初から知っていたけど。私は絶 対的に愛されていたのを。誰もが誰も、別れは寂しいと言ってくれた。泣いて縋った親友には本当に悪いことをしたと思う。でも決して私を忘れてしまいたいと は言わなかった。念のため取り置いた願いの空座をどうしよう。ていうか私はあっちの世界でどういう扱いになるんだろう。行方不明かな。勿論信じられなくて もいいからときっちり説明はして、皆良い人たちばかりだから私を信じてくれたけど、私としたことがその後の処理をすっかり考え忘れた。下手したら死体隠蔽 とかそんな罪状被せられて人生棒に振ったりしないだろうな。どうしよう。でもあの人たち変なふうに頭回るから案外大丈夫かもな。うん、きっと大丈夫だ。 だって、私の大切な人たちだし。ああ、さようなら大切な人たち。もしかしたら戻って来ることもあるかもしれないよ。あっちは相当理不尽だから、さしもの私 も嫌気がさすこともあるかもしれない。確率はきっと天文学的数字だろうけどね。しかしそれにしても気持ち悪い。視界が回る。世界が回る。回る。


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「死ね───ッ!」
「攻撃の洗礼は禁止だっつっただろうがああぁあああぁぁぁぁぁッ!」





だらだらと続いた連載でしたがひとまずこれにて終了です
長い間、本当に、本当にありがとうございました

そしてこれからもよろしくお願いします




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