ハロウィン[Halloween]
 諸聖人の祝日の前夜(10月31日)に行われる祭り。
 スコットランド・アイルランドに起源を持つアメリカの祝い





dizzy番外編
OVER STOCK





 ギィコ、と手の中の金物を引いて、ぶ厚い橙色の皮を切り落とす。ゴトリと重たい音が整然とした庭に響いた。

 「・・・何をしてるんだ、お前は」
 「あ、コンニチハ、不法侵入宇宙人さん」
  の声を引き金としてすかさず飛んできたグーパンチに、金物・・・普通名詞を細かくするなら『ノコギリ』で応戦する。ギザギザに尖っ た側面は、宇宙人 で も流石に殴りつけたくはならない立派な武器&防具だ。いくらなんでも素手で立ち向かうなんて無謀なマネはしたくない。
 大体なんでこの程度の軽いジョークにまで3回は余裕で死ねるくらいの攻撃を施されにゃならんのだ!
 「わ、わ!止めて下さいよ〜ッ、ノコギリ折れるッ!」
 普通の人間ではありえない強烈な拳のインパクトを、鉄板入りの靴底(通常装備)を鋸の腹に当てて受け流す。奇跡にも腕力だけで敵うよしはない。その辺は 普 段虐げられている日常からのアイデアで勝負である。
 ・・・ここで嫌な日常だなあ、だとか気付いちゃいけない。死にたくなるから。

 「何をしている、たわけ」
 「カボチャ切ってるんですよ。見て解れ視覚細胞異常者」
 舞空術の応用で足元の気を爆発させ、素早くピッコロから距離を置くように跳び退る。幸い彼の本能は追撃に向かず、カボチャと指された異質に向かってくれ た。

 「・・・この、奇怪な物体は、一体何を示したいんだ」
 「ジャック・オ・ランタンですよ。ハロウィンの残りで遊んでるの」
 怪しさ大爆発の笑いを浮かべたお馴染みの表情と、中身を取り出した際の大きな底穴。どこからどう見ても微妙なメジャー加減を誇るあの物体である。

 「なぜ顔を彫る!?」
 「・・・あ、そうか。ピコさんてば、ハロウィン知らないのか」
 どことなく怯えた様子の異星人(ただし地球産)。
  は数瞬キョトンとして───やがてニヤリと邪悪な笑みを顔に乗せた。







 「悟飯く〜ん、Trick or Treat!」
 「・・・期限切れですよ、 さん」

 唐突に。
 孫家庭先に出現した のいでたちは、恐ろしく異様だった。
 頭にはずり落ちそうな黒い魔女帽子。左手には昔ながらの竹箒。そして右手には、頭三つ分はあるだろう巨大で重たい人面カボチャ。この装備で空を飛んでき た のだから、もしかしないでも箒には跨ってきたのだ。
 飛行機にでも目撃されていたかもしれないと今更ながらに考えた。まあいい。どうせ帽子に隠れて自分は判別不可能なのだ。見られても脇を飛んでいたピッコ ロ が話題になるだけである。

 「いいじゃんよ、何か頂戴?」
 「じゃあ、はい」
 ゴソゴソと懐を探って取り出されたのは。
 「よっちゃんイカ・・・」
 しかも開封済み。しばし思考して、 はウム、と頷いた。無駄のない動きで酒のツマミをポケットに仕舞う。
 「まあいい、貰っておこう」
 「いいんですかそれで。駄々捏ねるかと思った」
 「当日じゃないしね、許してあげる。当日だったらトリック仕様でヘソクリ奪取」
 勉強机の上から二段目、バインダーの中!ケケケと笑う にぞっとしたように悟飯は一歩退いた。何で知ってるんだとありあり書かれた表情が小気味良い。

 「おい、
 「はい?」
 脳天に軽くチョップを貰って振り返る。憮然とした表情のピッコロと、高い位置で目が合った。落ちて来た帽子をずり上げて、小首を傾げる。
 「何をしに連れて来たんだ。用がないならさっさと修行に行くぞ」
 ああ、と手を───打ち合わせられないので、代わりに竹箒の柄で地面を突き刺す。この人修行に誘いに来てたのか、という納得と、本題を思い出したことの 表 れだ。

 「悟飯くんに面白いもの見せたくて・・・あと、ピッコロさんにも貴重な体験を」
 言いながら首もとのリボンを解き、脱いだ帽子に括り付ける。巨大なカボチャの脇穴に手早く通し、帽子とそれを固定した。
 訝しげに見遣る二人には見向かない。どうせすぐにわかることなのだから、説明するだけ面倒なだけだ。

 「悟飯くん、もしかしたら一瞬だけかもだからよく見ててね〜」
 しっかりとカボチャを右腕に抱え、帽子の形を整える。よし、と一声満足げに上げて。
 「あ、ピッコロさん、これ持ってて下さい」
 左手で竹箒を突き付ける。一応好奇心というモノが働きはしているのか、渋々ながらもぞんざいに受け取った。
 「もっとしっかり持ってて下さい。落とすと困ったことになるんで。両手で・・・そう、しっかりね」
 案外素直に指示に従い、「両手で」「しっかりと」箒を握るピッコロ。思っていたよりあっさりと、彼の両手は塞がった。
 「手はそのまま放さないで。では目を瞑って。はいどうぞ!」



 いつになく精一杯に、 は右手を閃かせた。







 ガボン。







 「・・・ッぶ、ふ、くくッ!」
 「あ、あっはっはっはっはッ!」
 2人は心の底から笑っていた。 程あからさまに声に出してはいないが、悟飯の爆笑ゲージはリミットを振り切っている。値で言うなら より上だ。何故 な らどこまでも予想外の出来事だったのだから。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 チリリ、と産毛が逆立つような殺気がピッコロから溢れ出る。しかし笑いは止まらない。どうして今、この笑いが止まろうか、否、止まらない。
 だってだって!
 「ピコさん、やめて、ひとことでもじゅうぶんだから、もうなんにもいわないで・・・ッ」
 「ピッコロ、さ、そ、そんなカッコで凄まれても・・・・・・!」















panpukin.jpg
                  そんなカッコ















 「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ!!」」
 「キ・サ・マ・ら・・・・・・ッ!!」
 息も不可能な状態にまで追い込まれた たちに、仕掛けられる猛攻、猛攻、猛攻。初めこそギリギリとはいえ避けていられたのだが・・・。

 「・・・ぶっは!ご、ごは、く、ぴこさ、見ちゃダメだ・・・ッ!」
 「え?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は・・・・・・ッ!」
 襲い来る笑いの発作。カボチャを被ったまま攻撃を仕掛けるその滑稽という言葉など足元にも及ばないスタイルの前には、大人しく往生する他手段など見出せ な かった。

 笑いは時として最強の武器である。







 焦げ付いた地面に倒れ付し、あちこちから血を流す は未だ引き攣ったままの口元に手を当てて呟いた。
 「悟飯くん、どうよ」
 「・・・こんだけボロボロになってアレですけど・・・いいもの見せて貰いました」
 同様に( よりやられていない辺り実力の違いが垣間見えるが)出血を見せる悟飯の声に、 は深く頷く。どこか恍惚とした笑顔で、力の入らない腕を太 陽 にしっかりと翳した。
 拳を握り、突き出して、腹から声を絞り出す。



 「12月はサンタクロース希望・・・!」



 この後つい想像して、傷の痛みに呻きながら笑いまくったのは言うまでも無い。


 茶色の地面の上で、原型を留めなくなった橙色の破片が風に煽られて散った。




ハロウィンもとっくに過ぎたのでイベント後話
ピッコロさんは要らんことばっか博識で、世に浸透してることには疎そうだという偏見から
きっとクリスマスも知らないのでしょうね(勝手に)

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