連携プレイ
「・・・あ、雨だ」
「雨だな」
学徒の苦行を終えた神楽と龍麻に無常に落ちる、空からの冷たい試練。下駄箱に上靴を放り込んで、神楽はくちびるを尖らせた。
「夏、ウザイねえ」
「梅雨、だろ」
「含めてイヤだよ」
黒く重たげな忌々しい雲。暖かな(つうか暑い───熱い)太陽を二重三重に覆う雲は、白く実害のないものなら歓迎も出来るというのに。よりにもよって、
結構な強さの、雨。心なしか遠くでゴロゴロと不穏な音が響いた気がした。
二人の他に人はいない。いつものメンバーは用事があるとさっさと帰宅し、他は・・・きっと、天気予報でもあらかじめ聞いていて、急いで帰りでもしたのだ
ろう。ああなんて薄情な奴ら。教室でダラダラと残っていた自分たちに一言声をかける、位の優しさは見せられないのか最近の若いもんは。
「どうしようか、濡れて帰る?」
「馬鹿言うな」
「・・・そう言うとは思ってたよ」
神楽は再び上靴を取り出して、踵を踏んで突っ掛けた。同じく龍麻も履き替える。
「ガメる」
「ったりまえだろ」
「どっち?」
「東」
「ほんじゃ西校舎」
簡単に言葉を交わして、二人は正反対の方向へと向かう。滑る床を気にもとめず、少しだけ早足に。
「5分後にな!」
「あいよ〜!」
二人は当てを頼りに目を光らせる。小さくなる互いの足音。
ガラリと職員室の戸が開く音がして
(職員室からガメるてありか?)
思いに敢えて無視を決め込む。
二人は5分間、校舎を彷徨う。
・・・各自、売れ残りの置き傘を探して。
|