東京魔人学園外法帖
式神精製プロジェクト
や ら壬生やら御神槌やらの目の前で嵐王はひたすらに式神を語っていた。
もうすでに延々と、軽く30分は続いているであろう。
今耳を傾けているのはただ一人、元々工学を好んでいるだ けだ。
内容は皆さんご存知の通り。
敢えて要約を施すならば、次の様な物になるか。
式神と言っても陰陽士などの使うものではなく『科学』を用いた物で。
映像を空気中の塵や埃に投影、それと共に発熱、発光する事で敵を攻撃する物である。
ていうか要約になってんのか、これ。
・・・・・・まあいいか。
そんな説明にも一区切りついて、嵐王は此方をぐるりと見回した。
何か質問は?
マスクの下で光る目が質問を出せと如実に語っている。
「嵐王ってさ、マスクしたまま喋ってて苦しく無い?」
「無い」
素朴な質問をあっさり切り捨てる支奴───じゃなかった嵐王。
声がこもらないのは確かに可笑しいよね。
こもらない所か、かなり明瞭な坪井ヴォイスに首を傾げる。
「式神に対しての質問しか受け付けんぞ」
完全秘密主義者と言う訳でも無いだろうに眼光鋭く、それはもう「アンタ犬神さんでしょ?」と言う程に鋭い目付きで、のたまった。
きっかりθ45度に首を傾げ続ける事しばし。
頭の位置をゆっくり戻しては 言った。
式神さ─────。
「映像投影の意味あんの?」
「「「「─────────────ッ!?」」」」
いきなりの禁句に絶句する可哀想な居合わせ組。
壬生や御神槌が平然としているのは、腹黒だからに違いない。
絶対そうだって。マジで。間違いなく。
「音声も不必要だしねぇ。その分攻撃に回しちゃえばいいのにもったいない」
更に言い募るに、 益々冷や汗を流す一般(?)人。
しかし当の本人達には何ら不具合はないようで。
「いいだろう、儂の趣味だ。」
変な趣味だ。
言いたげに一度開かれた一般組の風祭の口は、他三名の大きな手によって塞がれる。
此方側が口を挟んではいけない。
「趣味もいいが、の 言う事ももっともだろう」
唐突に、今まで有って無きが如しだった元・新撰組が口を出す。
その背には式神映像がべったりとくっ付いていた。
─────伏姫が。
「ろ、ロリコン───────────ッ!!?」
「黙れ」
ドフッ。
「おぐッ!?」
刀 使いかと思いきや、意外に無手だったりする壬生の拳がの 鳩尾にクリティカルヒット。
に 999のダメージ。
女の子に何て事を、という呟きを遺言に、細身の身体は畳に伏した。
死んでない!等の反論すらない。
「俺も壬生の狼と呼ばれた男だ。・・・死にたければかかってくるがいい」
・・・返事が無い。ただの屍のようだ(byドラクエ)。
ていうかそれは挑発であって、あんだけ手加減無く殴った後でいうセリフではありませんよ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この・・・・・・・・・・・エセ新撰組・・・・・・・・・・・・ッ」
緋勇 、 決死の生還。
息も絶え絶えに手を震わせて言う死にかけに壬生はチラリと目をやって。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フン。
鼻で嘲笑った。
「うが─────ッ!ホンマにムカつくなぁ、テメェはッ!」
腹部の鈍痛もなんのその、(気持ちはよくわかるが)吼えて壬生に掴みかかる。
その肩に、ポンと優しく冷たい手が置かれた。
「まあまあ。 あまり怒るとブチンと血管が切れますよ?」
何時もニコニコキリスト笑い、御神槌の手は心があったかくも無いくせに、ゾンビも顔負けに冷たい。
全然有り難くない静止のセリフに、は 憮然と振り向いた。
「高血圧のじいちゃんじゃ無いんだから」
「似た様なモノだろう」
「嵐王ひどッ!?」
うら若き乙女を寄ってたかって虐げる三人。誰が乙女と言う無かれ。
ちなみに一般ピープルはとうの昔に退避した後である。
いや、つーかさ、式神の話してくれないと終わらないんだけど。
「あー、そうそう。式神。映像」
作者の心の声が届いたようだ。
が 思い出したように(実際今思い出した)端的に話を促した。
「ロリショタ疑惑が湧く可能性も十分ある訳だから、映像やめない?」
「・・・もう一度食らいたいようだな」
「あ、いやいやそんな」
何気なくチラッと伏姫を見て、すぐに顔ごと背ける。
笑いに口元が引き攣り震えて堪らない。
そんなに 僅かな救いの黒い手が差し出された。色でなく、オーラの黒い手が。
「、 そんないくら見た目笑いに満ち満ちているからって、正直に笑ってしまっては壬生さんが可哀想でしょう。確かに見た目は明 らかに疑い無くロリコン ですが、それを抑える事こそ円滑な人間関係を築く第一歩なのですよ?隠し子みたく赤子連れてるよりずっといいでしょう。ああほらまた別の視点で笑い出す。 え?壬生さんの髪の毛が─────」
「死ねッ!」
ずんばらり。
妙な音と共に畳が裂け、千切れた鎖がチャリンチャリンと音を立てて地に落ちた。
振るたびにダメージを食らう妖刀の閃きが幾つも空を切って(死にますよ?)、反撃の雷撃がすぐ傍で破裂して、慌てては 壁際へ避難する。
嵐王は既に其処に居た。
「・・・言ってないからね、髪の毛」
「そうだろうな」
「式神の事だがな」
「あ?」
粗方家が瓦礫になった頃、嵐王がポツリと口にした。
二大腹黒大決戦はまだ終わっていない。
「働かざるもの食うべからず、がこの村のルールなのだ」
夕日に照らされた横顔が凛々しい。
凛々しいが、言ってる事は顔にそぐわない、ちょっと間抜けな格言(?)だと思う。
「・・・つまり?」
ピカッと光る稲妻にぶち当たった哀れな下忍を見届けてから嵐王を振り仰ぐ。
一秒後、男の横顔の陰影が濃くなり、また悲鳴が一つ聞こえた。
風祭の声に似ている。
「働き口が無い、と若に相談されては仕方なかろう」
苦笑する鳥面男の横顔が、もう一度強い光に照らされた。
今度は英語でアウチッ!と悲鳴。
つまるところ、就職場所を増やす為に───威力を犠牲にした訳か。
「・・・・・・絵描きとか、いるんだ」
「お前、声優やってみるか?」
の 疑問を無視して、案外真剣そうに勧誘する嵐王。
溜息をついて瓦礫の山に寝転がった。
まだ黄龍と四神の声が付いていないのだが、と言う深い声を聞きながら、赤い空をボンヤリと眺める。
金属のぶつかり合う音と腐れ坊主の悲鳴に顔を顰めて。
「・・・・・・遠慮しとく」
「そうか」
その後鬼道衆の面々は。
雷の落ちまくった辺りだと押し寄せた徳川軍を撃退するのに─────。
半分以下に減った戦力で、恐ろしい程の苦戦を強いられた。
戦いに役立ったのが雷なのか妖刀なのか。
それだけは定かではない─────。
ノ───────コメ──────ンッ
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