「風祭を一文字で表すなら〜」
「子」
「煩」
「子」
「子」
「あ〜、九桐惜しい!」
「俺をガキ扱いすんなお前らッ!!」
東京魔人学園外法帖
素直なキモチ
ど んよりと不自然な闇がたちこめる中、その日の龍泉寺周辺見回り部隊5人は大声で笑いながらその辺を巡っていた。高々見回り程度に5人───それもとう の昔にLv99を迎えている、 壬生、御神槌、風祭、九桐の5人───も回らせるのは無駄だと思うのだが、が 暇人を募った結果こうなってしまったの だ仕方がないと思いたい。
しかし十分歩行の邪魔になる程荒れ果てた路地の土を蹴散らし歩いても、そもそも見回り自体必要な場面などそうそうあっていい筈もなく。
暇を持て余したが 唐突にこんな質問ゲームを始めたのは、ほんの一分前だった。
「じゃあ、天戒を一文字で表すなら〜?」
「・・・そうだな・・・」
先程までの2、3問での即答と変わり、今度は少々間が空く。
ああいう何気に地味なタイプは表しにくいものか。
「・・・鬼?」
「阿呆。そりゃお前の願望だ」
小首を傾げてポツリと呟くお子様に、如何考えても九角に失礼な指摘をいれる。 まあ実際、彼が「鬼」と表されるかと言えばそれは勿論「NO」なのだ が。
「・・・父、とかか」
「ていうか、老、じゃないですか?」
「それいい、ナイス御神槌!」
本人がいないのを良い事に、言いたい放題である(きっといても言うけどな)。
九桐の「父」発言も案外酷いモンだ天然鬼道衆。
パチン、と手を打って神父に賛同するは 満面の笑みを浮かべて、ピタリ案を歓迎していた。
「なら、御神槌を一文字で表すと、如何だ?」
「怖」
「恐」
「黒」
「・・・ちょっと皆さん・・・?」
ニッコリ。
にこやかに真っ黒スマイルを惜しげなく披露する御神槌に、冷たかった空気が絶対零度に凍りつく。あまつさえバックに雷雲呼び寄せてる所が際限なく怖い。
「そういう時だけ即答って、喧嘩売ってるつもりですか?」
「いやいやそんなそんな」
ていうか何でアナタだ けに詰め寄るんデスか。
ペ チンペチンと己の額をはたかれると、 ペチンペチンとの 額をはたく御神槌の微笑ましい姿を見詰める、腐れ坊主と自称京狼の瞳はメチャメチャ優し い。親が子を見守るように、はたまた某「千の仮面を持つ少女」のようにキラキラキラキラと☆を湛えて微笑んでいた。
キショイ。
その脇で風祭が複数人に怯えているのにも、作者は決して根性無しとは言うまい。
「じゃあ、劉はどうなんだよ」
散々子供だ子供だと叩かれたのがイタかったのか、今更不貞腐れて呟く恐竜並にオニブなチャイルド。初めに答えたのはニヤニヤ笑いの九桐だった。
「小」
響く声でハッキリと発せられた言葉に、パッと風祭の顔が輝いた。
僅かに顔を紅潮させて─────。
「やっぱ俺よりちっさいよなッ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ああ、風祭。
何でお前そんなに純真なんだ。
何でお前そんなにイイ笑顔してんだ。
何でそんな事でそんなに喜べるんだ・・・!
「・・・可愛コちゃん・・・」
「な、何だよッ! 何でそんな微笑ましそうな顔してんだッ!!」
「・・・俺は寧ろ、不憫でしょうがないのだが」
「喜ばせておいてあげなさい。どうせその内虚しさに打ちのめされるんでしょうから」
一人木に爪を立てて笑う九桐をチラリと見たは、 困惑する風祭の頭を、心底からの慈しみを込めて優しく撫でた。何だよ子供扱いすんな、そんないつもの セリフさえ今は涙を誘う。
───いつか、おっきくなれるサ・・・。
「・・・で、壬生くんと御神槌は?」
まだ笑いを収めない九桐に風祭をけしかけて、表面だけは何となく仲の良く見える腹黒に向き直る。二人は自然に顔を見合わせ。
「「いや、特に」」
「・・・つまんねェ回答だなオイ」
ペッと唾を吐き捨てる真似をする黄龍器の妹。つくづく人を怒らせるのが上手い人間である。
「・・・別に、笑いを求める話では、なかった筈、デスヨネ?」
「うん」
じわり、と滲み出る殺気にもめげず、ごく素直に首を振る。
そして一言。
「でも私は生涯笑いを求める女なのさッ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・ああ・・・・・・・・・・・・・・」
「こら。コラ、そんなキチガイを見るような目を向けるな」
長い、長〜〜〜〜〜い沈黙が、乙女の柔肌にチクチクとイタい。
針のムシロとはこの事か、などと苦々しく思ったりする位イタい。
人格的には陽性人間のに は、沈黙は恐ろしい凶器とも言えた。
更に暫しの沈黙後、やはり此方も耐えられなくなったのか、見掛けも中身もお子チャマな風祭が漸く口を開いた。
「で、は どうなんだよ、劉の事」
「ん?・・・いや勿論─────」
唐突に、言葉を切る。
周りが何だといぶかしむ中───は スっと頬を赤く染めて恥らった。
「「「「・・・・・・ッ!」」」」
男に比べれば相当にほっそりとした手を口元に当てて目を伏せる少女に、4人は息を呑む。一応断っておくが、こいつらに恋愛感情があるわけではない。
決して。
マジで。
何にしてもガキ(私、劉くんファンですよ)に気があるような素振りを垣間見せたは ウルー年よりも珍しく清楚に微笑んだ。
口元をゆっくりと綻ばせて─────。
「△」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・さんかく?」
全く雰囲気にそぐわない一言を呟いたの 顔を、九桐がつつっと覗き込む。今だ頬は染められた、言わば《乙女ちっく》なままだ。
「ていうか寧ろ愛」
最初からそう言え。
そんな優しいツッコミをかましてくれる優しい人間はこの場にいなくて。
風祭以外の3人はさっさと早足に去って行ってしまった。
「シカトかよ・・・なんだい、ケチ」
元々ノッてくれるとは思わなかったケドさ〜、と愚痴る。 その脇で呆然としている風祭の頭をヨシヨシと撫でて、此方もさっさと3人を追って行ってしま う。だから勿論─────。
「・・・・・・え・・・・・・マジ?」
恋愛沙汰にはトコトン縁のない少年が本気で漏らした爆笑確実なその一言は、幸いにして誰にも聞かれてはいなかった。
可愛いよね、風祭。
「あ、もうすぐ龍泉寺着くじゃん」
「ああ・・・じゃあ、本命訊きますか?」
「本命?」
角を曲がれば終着点、というポイントまで見回りを終えた一行は、足を止めた御神槌につられる様にして立ち止まった。キョトンとした表情で神父を見詰める の 両肩を、後ろからそっと覆うように掴んでニッコリとスマイる(<動詞)。
「を 一文字で、と訊いてませんでしたから」
「・・・いいよ、いらない」
「まあそう言わず」
さりげなく身体を捩り手を外そうと無駄に足掻く。 相変わらず笑いを絶やそうとしない御神槌の手に此方もさりげなく力が篭るのを直視していた風祭の頬 が、僅かに引き攣った。
「はい、如何思いますか?皆さん」
ついにささやかに暴れだした少女の首を、苦しくない程度にキュッと絞める天使のような悪魔。
「ヴヴ・・・どうせ《変》とか《奇》とかに決まってるのに・・・」
「「・・・いや」」
さめざめとした、否定返答など在り得ないと思われた嘆きに、何の奇跡か真夏のサン○クロースか、ポツリとした否定感情入力が返ってきた。
ただし《冷》。
それでも嬉しかったのか、は パッと顔を上げる。
「え、何々ッ!?」
「ちなみに私も違いますよ」
言って3人は顔を見合わせた。風祭は「意図がわからない」というように自分より数センチ高い位置にあるの 目を見詰めている。
・・・だから、可愛いって、カザ。
3人の目が、一斉にに 向けられた。はで 一瞬怯えるように身体を竦ませたが、やはり何を言われるか聞きたいのだろう。その表情は風祭に負けず 劣らず子供らしい。
御神槌の手が右の肩から退かされる。変わりに九桐の手がやんわり置かれた。
おまけに壬生の手が、ボサついた頭に乗せられて───似合わなくニッコリと笑った。
「お前を一文字で表すなら─────」
「《珍》しか無いだろう」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・オイ」
「はい?」
たっぷり15呼吸分程呆然として、引き摺ったまま後ろに目を遣れば。
私も同意見ですよとテレパシーで返されて。
前方でキラリと光った九桐の頭にさえ肯定される。
唯一風祭だけが気の毒そうに見ていたのだが、それはあまりにちっさくて視界に入らず(<酷)。
「・・・・・・ッ!期待させやがって、この、へちゃむくれ─────ッ!!」
「へ、へちゃ・・・?」
ダッ!
誰 かの疑問も吹き飛ばし、は 一目散に駆け出した。
涙をちょちょぎらし、破れ寺の門に穴を開け、恐らくは兄、龍斗に踏み付けられて漸く、大人しくなる事だろう。
「───惨い・・・・・・」
爽やかに笑い声をあげる酷い大人とは裏腹に、心底から同情を向ける何とも友達甲斐のある風祭の呟きは、荒んだ風に攫われた。
願わくばこの少年が将来凄まじいグレ方をしないで歩めるように─────。
─────彼等が世界を救うとは
お釈迦さんでも思いたくあるめェよ─────
この頃から風祭に対して「可愛らしい」という感情をぶつけておったのですなぁ。弟に欲しい
九桐が出てるのは何でだ・・・?
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