「結局ピコさんとかも皆、同じなんだよねー」
呆と座って神楽が呟いた。余りの唐突さに天津飯は三つの目をパチクリと瞬かせる。同じように座り込んでいたクリリン、ヤムチャの両名も、異様な物を見る
目を少女に向けた。
「・・・何のことだ?」
「・・・へ?」
問い掛けた声に暫しキョトンとして、数秒後、神楽がゆっくりと振り向く。呟きが聞こえているとは思わなかったのだろう。
バン、ボン、と定期的に響く爆音を聞かないフリを決め込んで、三人は返答を待つ。ピッコロと悟飯の修行と称した手合わせは、見た目からして心臓に悪い。
好き好んで修行に励む身で言うことではないが、真剣に血を流すまで戦うのはどうなのだと思う。
ああ、と手を打ち合わせたのは、更に数秒後だった。頬に一筋、雫が流れる。
「いや、スポーツマンって、根本は皆一緒だって話を思い出しまして」
どこか遠まわしな言い様。へらりと笑う顔を掴んで目を合わせようと試みるが、天津飯の目にどうにか合わせないようにと琥珀の目が必死にバタフライを開始
した。
「ピッコロがスポーツマンかとかいう疑問は置いといて、どう同じなんだよ?」
「いやえっと」
「答えないと天津飯の目から、三本のビームが!」
「出ん」
そっと引き下がろうとする肩をも押さえられ、神楽は泣き笑いのような表情を浮かべた。
「ピッコロさんてば、耳が良いんですよう」
言いながら、肩に置かれた二者二つの手に己の手を重ねる。その動作は気になったが、今はこちらを追い詰める方が面白い。
「で?」
添えられた手に力が篭ったように見えた。天津飯はそれを軽い怯えの反応と取った───のが間違いである。
「多分聞かれたらボコられるんで」
女特有の小さな手が、クリリンとヤムチャの手をしっかと握り、前に引き倒した。体勢を低くして顔を固定していた天津飯の手を振り切る。背負い投げのよう
に手から繋がる「本体」を地面に叩きつけて。
「言うのは御免でーすッ!」
「おい、待───!」
身を翻し飛び去る背。その素早さに呆然とした天津飯の視界の中で、豆粒ほどに小さくなり、消えた。
スポーツマンの根本は皆マゾ。
自らを痛めつける人間へのそんな文句を、貴方は聞いたことがあるだろうか?
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