SSS
 

 何のことはない。ただ小さな暴力団からちょっとだけ恨みを買って、襲われたから相手をしている、それだけのことだった。
 神楽の日常の危険から言えば、とっても安全な出来事である。
 ヒョイと首を傾けると、頬から1センチに満たない距離を銃弾が掠めて行った。更に2発。弾道を追って安全牌に避けることは酷く容易い。避けた流れで手近 な人間を殴り倒す。派手な音を立ててゴミの山に頭から突っ込んでいく姿は、自分がやったことながら少し不憫だった。
 地面を蹴って疾走する。体勢を低くして刃の嵐を走り抜ける足元で何度か呻き声が聞こえた気がした。倒した人間でもうっかり踏んだのだろう。
 多分死にはしないから、大丈夫。
 「な、何やってんだ、さっさと殺しちまえ!」
 叫ぶ幹部らしき男が銃口を向けた。安全装置を解除し撃鉄を起こす。雷管を強打する準備を整えた、その手際はあまり慣れてはいない。身体のつくりから見れ ばどちらかというと格闘戦が得意なタイプだろうから、銃など使ったことはないんじゃなかろうか。
 鍛えられたとはいえ、神楽の防御力は普通の人間よりは強い、という程度だ。流石に鉛玉を食らったらヤバイ。貫通してくれれば仙豆という手もあるが、内部 に止まった場合は抉り出す必要性も出てくる。
 (それは痛い)
 方向を転換し、違う男の顔面を踏み台に銃口へと飛翔する。直線で向かう速度は目が痛い程で、男には速度を追えていない。それでもその指はトリガーを力強 く圧迫しようと動いていた。
 「死ねぇ化物!」
 「あ、やべ」
 慌てて右手を地面に這わせる。僅かな出っ張りに爪をかけ、舞空術を軽く使って高度を下げた。空中で一回転し銃弾が頭を過ぎるのを確認、先程よりも更に低 い位置から飛び込む。
 膝を蹴り付けた数瞬後、足の折れる音を認識した男の絶叫が裏路地に響き渡った。

 「ひいふうみいよ・・・あれ、2人くらい足りないような・・・」
 気絶させた男を転がして、初めて数の少なさに気が付いた。転がる総勢13名。確か15きっちりいた筈、と考えると気が滅入る。
 「報復に来られても面倒なんだよねー」
 まだその辺にいるかなと呟くと、神楽はトンと地面から足を離した。
 上空から凄惨たる風景を見下ろす。所々赤い滴りがコンクリートに付着していた。あう、と肩を落とし、漸く自分の所業の凄さを実感する。
 「どんどん人間じゃなくなってく・・・」
 苦虫を噛み潰したような、それでいて迷える子羊のような情けない顔で、神楽はぐったりと力を抜いた。もういい、追うのは止めておこう。

 これが普通になってきてるのは忌々しき事態で、何もかもが緑黄色宇宙人のせいだ、と呪いを掛けて空へと飛んだ。


   
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