(拍手リク:2004/8/3の絵板(水着神楽)の話、神楽以外の人
の視点で)
鴉羽色の髪が気怠けにクーラーの風に煽られてそよぐ。俯いているせいで瞳は見えないが、多分げっそりと、嫌そうに眇められているのだろう。
極彩色を身に纏った神楽は、結構にそれが似合っていると思うのだけれども、本人は酷く不服らしい。部屋の中、“この世界の”母と“小さな頃の”自分、そ
し
て“違う世界の”トランクスの視線から逃げるように顔を逸らしている。
「似合ってると思うんだけど」
「所詮オマエはブルマさんの息子」
頭の後ろで腕を組み言う幼子を、少女はズンバラリと切り捨てた。ひっでえ!という文句を受け流すのは良いけれど、その母の殺気漲る半眼に気付いているの
だ
ろうか。
丈の長いカドミウムオレンジのパレオをビラリと広げる。
「何かさ・・・何でこんなゴージャスなの買って来ちゃったか訊いてもいいスか?」
僅かに顔を上げる神楽の顔は、普段とは比べ物にならないほどに情けなかった。眉尻が落ちている。
「似合いそうだったからよ。神楽ちゃんが海行きたいなあって言ってたの思い出して、うっかり衝動買いしちゃった」
言葉に、更に肩を落としてしまう。おあずけを食らった犬のように、耳と尻尾が垂れる幻覚が見えた気がした。うっかりで買うなよ、というぼやきが耳に届
き。
「何がそんなに嫌なんだ?」
「似合う似合わないじゃなく。恥ずい。後、何でトランクスくん(大)がいるの」
「俺が呼んだー。神楽のこと吃驚させようかと思って」
「・・・まあ、パラレル未来からそんなあっさりサモン出来ちゃう事実には吃驚だけどね。しかも水着見せる為だけに来させるタイミングでさあ、どっちも暇
つ
うか、阿呆っつうか」
投げやりに、投げやりに。深い溜息が切実だ。
ああもう何だよ新手のイジメか、とヤンキー座りにしゃがみ込み、思い切り眉を寄せてブルマに目を向ける神楽。・・・正確には、ねめ上げる。
「海、行くんですか?」
「ううん、行かない」
あっさり言い放ったブルマに、あからさまに頬が引き攣った。
「・・・行かないのにうっかり買ったんですか・・・」
絶句した少女に代わり口を開いたトランクス(大)の言葉は、同情に満ちていた。コロコロと年齢不相応に可愛らしく笑う“母”の対応、思わずどうしようも
な
い苦笑を漏らす。
「そうなのよねー。買ってから気付いちゃった。もう9月なのよねー」
「うわー、もったいねえ」
ブルジョワジー生まれとは思えぬ呟きが最年少から吐き出されたのには、もう神楽も笑うしかないようだった。一応泣き笑いではあったけれど。
「・・・首括ってプールでも行くか・・・」
「死ぬから」
その時はもう一度こっちに来ようかな。
何となく毀れたセリフに、盛大なブーイングが一人から寄せられ。
「似合ってるよ」
その必死さに半ば嫌がらせも含めニッコリ笑って賛辞を送る。
その瞬間の彼女の顔は、激写したい程に見ものだった。
「至急星に帰れ、野次宇宙人ハーフ!」
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