(拍手リクエスト:髪を結んだ神楽。確かピッコロさんとの絡みの話・・・だっけ?(メモっとけ))
修行に来てから、途切れることなく不躾な視線を浴びていた。居心地の悪さもピークに達し段々腹が立ってくる。しかし無視。反応を返して一騒動あるんだろ
うなあと思えば、それも当たり前のコマンド選択だ。
頭を振ると、後ろで申し訳程度に一括りにした黒髪が尻尾のように揺れる。
・・・にしても。
(真剣にウザイ・・・)
炎天下、汗をざっと拭きつつ思う。
緑色無糖生物の考えなどわかりたくないしわかったら人として終わりだけれど。真後ろで首筋辺りを見下ろすクサレは魂から何を考えているのかわからない。
距離にして凡そ1メートル。近い。あの、ピッコロさん。うっかり口を開きかけて止めた。このまま騒動を起こさずに帰れるのなら、多少のストレス如き何の
その。
師匠を視界に入れないよう心掛け、気配だけを警戒したまま手近な岩に腰掛ける。はー、と重い溜息を吐いて。
(あれ?)
ピッコロの気配が消えた。数秒呆然とする。
奴の性質上帰ったとは考え難い。普段なら時間延長してでも神楽を極限まで鍛え込む筈で、今日はもうすぐ時間とはいえいつもよりずっと軽い修行だった。
どこか精神がトンでいる、ような。
「・・・!?」
そこまで考えて、ふいに襲った強烈な悪寒に身震い───する暇もなく飛び込み前転の要領で岩から転げ降りる。身を屈めた刹那ブンと唸った風の音、逃げた
頭を追う衝撃。
引き攣った横隔膜が細い悲鳴を漏らすのを、地面に口付けつつ聞いた気がした。
「ちっ」
不穏な舌打ちを耳にする。地面に大層な勢いで接触した、痛む頭部やら手やら足やら腰やら顔面やらを庇いながらゆっくり起き上がった。
「・・・おい」
「何だ不肖の弟子」
「何だはこっちのセリフだ不肖の挙動不審マスター。いきなり何しやがる」
噛み付く私に、勿論ピッコロは動じない。多少顔は引き攣らせたが。
鼻を鳴らして睨み付けられる覚えは今日に限って言えばない・・・と思う。今し方の言葉に食い付かれるなら、その前の攻撃の方が理不尽なわけだし。
「髪を毟ってやろうと思ったんだが」
「自分に毛がないからって、嫉妬かこのクソししょ」
ブウンと顔面付近を薙いだ手は当然だが避けた。反射的に髪に手をやって、先刻転がったせいで括っていた髪が解けかけているのに気付く。距離をとり、直そ
うと両手を後頭部へ。
「あ、ちょっと」
あっさりスルリ、と括り紐を奪われた。返す素振りはまるでなく指先でしばし弄び───握られた手のなかでそれは簡単に消滅した。
「あーッ!?」
「・・・髪を括ったキサマは気持ちが悪い」
「んだと、おい、これからも暫くあっついんだぞ!?良い感じの紐だったのにどうしてくれる!」
騒ぐ神楽を無視してピッコロは満足そうに踵を返す。
「今日はもう終わりだ。気分を害した」
「こっちが気分を害されたわ!」
広野を飛び立つ師の後姿にありったけの罵詈雑言を並べ立て、喚く。解放された黒髪が生温い風に舞った。
あまりの暴言集に攻撃が飛んで来るのは数秒後の話。
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