※涼宮ハルヒ登場人物ネタばれ注意
本を捲る。小さな字の羅列に実に適当な態度で目を走らせた。
最近できた友人から借りた、まるでもとの世界を舞台にしたような世界観が懐かしい。ていうかこれ、そのものじゃないのか。自分以外にも誰かあっちから来
てんのか。是非お会いしたい。世の理不尽さについて語り合おうじゃないか。
「この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい、かぁ」
「呼びました?」
「呼んでないよ」
ここに一杯いるから、好きなのあげるよ。
顔を向けた人間外に首を振って本に戻る。不思議そうな顔をして、悟飯もまた手元の本に意識を戻した。
この子は随分と退屈らしい。羨ましいことだ。心底代わって頂きたい。
また1ページ捲る。外で小鳥がちゅんちゅんと鳴いた。
一般高校生こと主人公が、バイタリティ溢れまくるヒロイン(ヒロインだろう、この書かれ方は)に、どこぞへ無理矢理引っ張られて行った。
ふと顔を上げる。
「何ですか?」
「・・・なんでもないよ」
さっきよりも大きく首を振って否定した。変なデジャビュをを覚えてないで、ちゃっちゃと楽しく読んでしまおう。決意して、今度こそ考えを他所に向けるこ
となく黙々と活字を追った。
クールビューティな少女が紹介された。読み進めたら宇宙人だった。
可憐な女の子が拉致されてきた。先を辿ったら未来人だった。
胡散臭い謎の転校生が現れた。捲らなくてもわかってたけど超能力者だった。
───ぱたん。
「あれ、珍しいですね、神楽さんが途中で止めるなんて」
「私にはこの本は辛い」
返してくる、と意気消沈しながら宣言する。宇宙人と地球人のハーフは僅かながら心配そうに眉を寄せた。
「僕行ってきましょうか」
ううん、いい。
三度首を振った。ちょっと友人に聞きたいこともある。何かこの主人公見てると、どことなく神楽を思い出すんだよね、とか言ってたマイフレンド。何がどう
思い出すのか問い詰めたい。いや、聞きたくないけど。でも聞かないといけない気がする。
面白いには面白いから、吹っ切れた頃にでももう一度借りて来るのがいいと思った。
30年後くらい。
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