SSS
 



 神殿の端っこに転がる馴染みの少女を見付けた。
 「神楽さん」
 「久しぶり、デンデ」
 少女と言っても僕より年上。なのだけれど、彼女はどうにも子供らしい仕種ばかり見せるので、やはり少女という言葉が一番似合う・・・気がする。
 へらり、と笑って片手を上げる神楽はかなり疲弊しているようだった。
 「どうしました?こんなところで」
 「修行中〜。見てあれ」
 上半身をノロノロと起こして指差す方を見る。一瞬だけ閃光が走るのを目にしたが、あとは何も無い空間が広がるだけで。
 「・・・?」
 時折影が飛び交うのが見えた気もした。が、やはり何だかはわからない。
 「あ、そうか、見えないのか・・・それが普通だよね」
 今、悟飯くんとピッコロさんが手合わせしてるんだよ。
 こともなげに言った神楽にきょとんとして視線を向けると、心なしか苦い顔をしている。頬杖をついてそちらを見守る琥珀の目は、睨み付けるという表現が正 しい。

 頬に擦り傷、肩や腹の辺りの服が破れて血が滲んでいるのに、僕は初めて気が付いた。
 「神楽さん、傷、見せて下さい」
 「へ?」
 腕を取ると頭が落ちる───支えを失ったのだから当然か。手に意識を集中して治療に当たると慌てて腕を引こうとした。
 「いいよ、こんくらいいつもの事だし。もう修行終わったしッ」
 「駄目ですよ。女の子なんだから、身体は大事にしないと」
 神楽がふいに息を呑んだ。何かと顔を上げると、あんぐりと口を開けてあっけにとられている。
 「・・・どうしました?」
 「いや、まさかデンデがそういうこと言うとは・・・」
 ナメック人って性別認識ないと思ってたんだけど、と口籠る様子に、僕は軽く噴出してしまった。いつも飄々としているこの人が、こんな些細なことに驚くと は思ってもみなかったのだ。
 「本で読んだんですよ」
 端的に言うと、それでも納得を示してくれた。ふうん、と鼻を鳴らす仕種が、また子供っぽい。
 「鵜呑みにはしないようにね」
 「はい」
 寒い風もそう気にならない、どこか暖かな空間にほんわかと笑う。

 ばしり、と何かが殴られるような音が聞こえた。





   
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