SSS
 

 「がおー!おねえちゃん、きょうりゅうだよー!」
 「お前そんなん怖くねえだろ。私もいい加減怖くねえよ。がおー」
 チチが所用でお出掛け、悟飯も外出。頭下げて悟天の子守を頼まれて、トランクスと一緒にしときゃいいやと思いきやベジータとお出掛け中。迷った末にデ パートのオモチャ売り場で戯れているわけだが。

 「おねえちゃん、かたぐるま!かたぐるまして!」
 「飛べよと言いたいところだがそうもいかんか。はいはい」
 「ぼくもー!」
 「ねーちゃん、オレもー!」
 「あの、私の肩って3つも4つもあったりしないから。1人で限界だから。ちょ、」

 何で遊び場の子供全員に集られてるんだろう。
 持ち上げて乗せるか自力でよじ登らせるか考えて、結局腰を屈めて待機してみたところ、想像以上の重量を食らってさすがによろめいた。わあ、とバランスを 崩して組み立てブロックの真ん中に突っ込む。子供に怪我させないように配慮したのがいかんかった。凸凹面に強打した顔面がウルトラ痛い。
 身を起こそうとした傍から更に重圧。手加減を知らない子悪魔たちが次々とダイビングを仕掛けてくる地獄に打ち勝て私。こら、と腕の力だけで手近な子供の 首根っこを引っ掴み持ち上げる。
 「ねーちゃんすげー!ちからもち!」
 「おれもー!」
 「腕折れる腕折れる腕折れる、退けーッ!」
 上に乗った小さな重量を無視して無理矢理起き上がった。転がり落とされてもめげないのが子供というイキモノだ。小さな生物は可愛らしいと言えば可愛らし いが、こんだけ集まるといっそサイヤ人クラスに鬱陶しい。
 「やってやるから、ほら、並べ!」
 「はーい!」
 うむ、素直な子供はまあ可愛い。言い出しっぺの悟天をまず肩に乗せてやると、高い笑い声を上げて喜んだ。他の子供への手本としてお前選んだんだから、安 全対策のために両手は離さないように。
 オモチャ売り場を一周するべく歩き出すと、他の子供たちも光り輝く目を向けて付いて来た。何だこのハーメルン状態。遠目で微笑ましげに見守ってるお母さ ん方、こいつら放っといていいんですか。異世界に連れて行かれちゃう恐れがあるかもしれないんですよ。

 「あ」
 「あー」
 「ん?」
 ふいに上がった声に視線を移す。キラキラとした大きな眼で見詰める先には、店頭ディスプレイを飾る、ふわふわ浮かんだいくらかの風船。
 よーし、言いたいことはよくわかった。お前らは次にこう言う。
 「フーセンほしい!」
 「だーめ」
 「おねえちゃん、フーセンほしいー!」
 「駄目ー」
 そういうのはね、私に言われてもどうしようもないんだよ。予想から外れてくれないおねだりに束の間の微笑ましさを感じて現実から逃避する。
 「ほしいー!」
 「・・・あのね」
 大合唱の合間を縫って、搾り出すように声を発した。期待の目に対して、満面に笑みを浮かべる。
 「我侭言うような悪い子が風船さん持つとね、風船さんが怒っちゃって君らを空に連れてって、二度と帰って来られなくなっちゃうんだよ」
 「ねーちゃん、かたぐるまー!」
 「よーし、厳密にはあんま良い子じゃないけど、良い子だー」
 歩き出すと近場の子供も混じって付いて来た。良かった、風船は物凄く諦めてくれた。そういう移り気の早さは大好きよ。
 肩車?何故だか子供が増殖したから、総計で20週はしたかな。


 「あなた、良い奥さんになれるわよー」
 「旦那さんは安心ね!」
 「・・・は?」


   

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