バン、と机を叩く音がして、シンは驚き振り返った。
「そうとしか考えられないだろ!?だって」
「だからって極端に走らないで下さいよ!」
神の住まいに決して相応しくない怒鳴り声の主は少女と少年。共に黒髪で、どこか兄弟のような気安さを普段は秘めているのだけれど。
「それでも、これ以外には思い付かない!」
琥珀の瞳が情熱を湛えて揺れている。
綺麗だな、と一時見惚れて、すぐにハッとした。止めなきゃ。思いはしたが、その滅多に見られない表情をもう少し見ていたいと思ったのも事実で、僅かな矛
盾感情が動きを止めた。
そもそもこうして会うこと事態「滅多にない」ことだ。
「よく考えて下さい、神楽さんが言ってることは」
「考えたよ!仕方ないでしょ?考えた結果がそれなら、私はそう信じるしかないじゃないかッ!」
まるで血を吐くような叫びだった。腰を上げて制止する悟飯の言葉に耳を貸していない訳ではなく、本当にどうしようもないのだとわかる、悲痛な顔。
「・・・悟飯くん、順を追って考えてみてよ。一番最初。何が思い付く?」
「・・・・・・・・・ッ!」
気力が尽きたのか、神楽が椅子に倒れるような勢いで座り込む。反対に立ち上がった悟飯がぐっと息を呑んで。
「・・・でも、僕は・・・」
信じたくないです、と。
吐息と同化して流れた声に、シンは一歩を踏み出した。
「あの、どうしたんですか」
「へ?」
「あ」
顔を青くしたのは同時だった。界王神を目にして居た堪れない気持ちで神楽に視線を移す。頬を引き攣らせて素早く目を逸らされた。
「喧嘩ですか?」
「い、いえッ」
何でもないんですと光速で手を振る悟飯に、ほっとした様子を見せるのが心から申し訳ない。ダラダラと背を汗が伝う。流石に、言えない。
(界王神の証はモヒカンだ、何て)
ついでに16号みたいな過去のモヒカンも界王神だという仮説も。
明後日の方向を向いて口笛を吹く神楽を睨み付け弁解をする悟飯は、如何見ても残虐なサイヤ人には見えなかったとか。
遠くから見ていたデンデ談。
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